家を建てるときは建築家に一任しない
これは、中小企業家の経営者の会合で、自宅を建てようと質問した若い経営者に対して、長老の経営者が言い放ったきつい一言です。
『私は建築家という人種をあまり信用していません。
建築雑誌などを見たり、あるいは実際の建築例などを見学したり、テレビでそういう番組を見たりしても、どうも変じゃないかと思うことのほうが多い。
ちょっと有名な建築家が創るとなれば、つい一任しがちです。
しかしながら
建築家というのは、高い吹き抜けだとか、トップライトだとか、大きな嵌め殺しの窓だとか、全面ガラス張りの家だとか、とかく見てくれがいいものばかり造りたがります。
確かに、洒落たデザインの家というのは外から見ている分には魅力的です。
が、実際に住んでみると馬鹿高いコストが掛かるのです。
冷暖房のコスト、メンテナンスのコストなど、長く住むうちには膨大な金額になっていきます。
そういう先々のことを考慮に入れない建築家が少なくない。
つまりおのれのコンセプトのために
住む人の快適や利便性や経済性を確信犯的に犠牲にして恥じない、
そういう自己顕示欲のかたまりのような人も建築家という人種にはよく見かけます。
これは住む方としてはたまったものではない。
エアコンはろくに効かない、窓が大きすぎて掃除するのも大仕事、
こういう家を造られた日には、
「じゃああなた、一度この家で生活してみなさい」
と言いたくなります。
例えば大きな窓を造ったとしたら、その窓がいつでも簡単に拭けなければいけません。
特に、全面ガラス張りのデザインの家は、ガラスを常にきれいに磨いておかないと、汚くて実にみすぼらしい。
しかし、天井まで届くような大きな窓を、実際にどうやって磨くのでしょうか。
ものすごく高い脚立に乗って磨けば可能なのでしょうが、命の危険を冒せとでも言うのでしょうか。
少なくとも、年を取ってからは絶対に無理です。
年を取ったらと言うことを考えて作られていない、から住めなくなるのです。
高い位置の窓は、結局は業者に頼むことになるわけですから、それでは非常に不経済です。
吹き抜けも同じです。
開放感があっていいという人も多いでしょうが、
では、高い吹き抜けの天井についている照明の電球が切れたら、どうやって替えたらいいのでしょうか。
やはりこれも命の危険を冒すか、業者に頼るかのどちらかでしょう。
そのうえ、吹き抜けには冷暖房の効率が非常に悪いというマイナス点もあります。
いかに冷暖房が効きやすい造りにするかということも、家造りにおいては重要なポイントです。
長い目で見れば、造りによって冷暖房費が大幅に違ってくるからです。
そして、コンクリートの打ち放しの家
格好良いからと住宅雑誌に載ったりして、本人も有頂天になる
俺の家はこんなにも注目を浴びる良い家なのだ!?と
20年経ったその家を想像してご覧なさい。
屋上から富士山が見え、植栽もして、友人も読んでバーベキューをやったり
でも、いつの間にか、仕事にかまけて主人は留守がちになり、奥さんと子ども達は屋上になんか見向きもしない。
洗濯も階段を使って屋上に干すのは辛くなって、全自動のドラム式で乾かすようになって
そして、大雨の日、屋上のドアから水が勢いよく吹き出てきて
偶々、嵐でゴルフが中止になった旦那さんが見たのは、プールになって一面枯れた木が刺さった鉢が幾つもぷかぷか浮かんで漂っていて
しかも、泳げるほどの深さになったプールではなく屋上。
しかも、外壁は、いつもまにか、屋上のヘリから漏れた水跡が黒いシミになって、汚くなってそのまま放置して20年。
そんな家に愛着を持てますか?(誰の家だろう?やけに具体的とは思ったが・・・)
…中略…
したがって、こういうガラス窓を大きくとった金魚鉢のような家は造らないに限る。
見た目のかっこよさ、それを追求する建築家に惑わされてはいけません。
それが長く住める家を造る基本だと思います。』
当時、設計事務所の社長になったばかりの私にとって、これは建築設計に対して厳しい社会の目があるということを思い知らせてくれました。
建主のために専門家として本当に役立っているか、自問する癖がつきました。
今日の新型コロナ感染状況
[2021/1/18 23時59分]国内新型コロナ新規感染者数:4,925人、東京都:1,204人、国内総感染者数:336,177人、死亡:4,596人
東京都1,204人、神奈川957人、埼玉328人、千葉363人
昨日の新型コロナ感染状況
[2021/1/17 23時59分]国内新型コロナ新規感染者数:5,759人、東京都:1,592人、国内総感染者数:331,256人、死亡:4,538人
今日は鎌倉は晴れていても富士は見えず、夕方になってようやっと顔を出しました。