利用者に喜ばれる建物づくり 建築について

連載1-1(1)利用者に喜ばれる医院・病院づくりー「参加型の共同設計」で進めたい

医院・病院を新築・増改築・改修しようとしている方に役立つ建物づくりの連載−1

利用者に喜ばれる医院・病院づくり 第1章 納得しながら進める医院・病院づくり

1.参加型の共同設計で進める設計手法−1

病院・医院を新築・増改築・改修しようとしている方に役に立つ建物づくりをご紹介します

S病院2階待合・多目的ホール

(序) 

この「利用者に喜ばれる建物づくり」は㈱中央設計で出版された「利用者に喜ばれる病院づくり」のリメーク版です。

当時の㈱中央設計で毎月発行されていた「中央設計ニュース」に特集してきた記事をまとめて出版されたものです。

『これらは、私どもが業務として取り組んできた経験の実践報告です。

日本の各地で、地域医療の確立に必死に努力されている方々と共同した施設づくりから学んだことを、

中央設計の医療施設チームで書きためたものです。

それぞれが「施設づくりは人づくり・街づくり」として夢は大きく、語られてきた物です。

しかし、いずれも厳しい条件の施設づくりであり、

「前例を検証して、必ず一歩前進」

を合言葉に仕事を進めてきました。

同様の後力が各地で行われ多様な経験が繰り返されていると思います。しかし、失敗も含めて経験を総括した生々しい情報や資料は見当たりません。

そこで私たちの細やかな、しかし、真剣な悩みと試行錯誤、そのたびごとに直面した要望や意見をまとめて発信することが、

今後の施設づくりの向上の一助になれば幸いと考えて出版をいたしました。(当時の代表取締役社長の言葉から引用)』

残念ながら、その中央設計は、2008年に自主廃業を決めて、倒産手続きをし、今はありません。

そこで、その中央設計の代表取締役社長だった私が、会社創立から最後の廃業までの歴史の中で、

実践の中から得た経験や教訓を何とか世に残したいという思いでここに書き現すことにしました。

実名は何分、昔のことでもあり、プライバシーを心配される向きもあろうかと、伏せていますが、全て実際にあった出来事です。

1.参加型の共同設計で進める設計方法とは

(1) アクロバチックとも言える増改築で病院リニューアルを成功した例

北海道札幌市S病院、誕生して30年後の1980年RC3階建てとなり、そのリニューアル計画です。

この建物は既存の病院建物を建てた後に成長する中で、隣接建物を購入し病院用途へと改修する形で拡大してきた経過があります。

この病院は拡大してきた歴史の中で、今回の増改築工事に踏み切る訳ですが、大変な難産でした。

移転建て替えすることも出来ず、敷地にも増築余裕が無い中で病院機能の変化と発展にどう応えられるか

という問題を多くの病院施設も抱えている事と思います。

この病院は、1階をピロティにして駐車施設にしたため

1階の階高が3.2メートルと極端に低いことが計画に大きな影響を与えていました。

その後、手に入れた隣の建物も改修して病院として使用し、10年以上が経過しました。

そして今回はさらにその隣の敷地を購入することになり、その時点で当社に設計の相談が参りました。

今回購入した土地に立っている建物は築年数も古く再利用はできないと結論をつけました。

建設委員会が結集され病院をどうするかの議論がスタートしました。

この時は建設事務局が基本的に検討し、その結果を節目ごとに友の会に諮るというやり方でした。

そして、建設委員会で3案を提案しました。

1つ目の提案は既存病院建物も含めてすべての建物を解体撤去して更地にする。

その上で、道路を挟んだ隣りの敷地も含めて、渡り廊下をつけて繋げて一体として全面的に病院を建て替え、再構築すると言うものでした。

2つ目の提案は1番最初の病院として建てた建物についてはまだ築20年なので再利用できると仮定して、新たに購入した土地の建物とその前に購入して病院として使用していた古い建物の2棟を解体して改築すると言うものでした。

3つ目の提案は、今病院として使用している2棟とも残して、耐震改修して再使用し、新敷地を更地にしてそこに増築した後、3棟とも繋げて病院展開するというモノでした。

この他にもいくつかの案がでましたが最終的に3案にまとめられました。

議論する中で、予算的には大きく全面的に建て替えると言うことにはならないと言う結論は予算上のことからでした。

建物の建て替えの時に資産価値が残っている場合、どのように償却するかは大きな経営問題

残存価値を残している固定資産を除却損にすることができるほど病院の経営実態には余裕がありませんでした。

既存の2棟の間には段差が70㎝も有り、接続用のスロープが1階にも2階にもあるという状況でした。

無関係に建てられた2棟なのでやむを得ない事情ですが、

病院内にスロープがあるという致命的な弱点を引きずることになってしまうということと、

病院用途として建てられた建物ではないこと、築年数も40年になり、構造的に脆弱さが窺えることから

解体除却し、そこに新たに増築することとししとしました。

従って、20年前に建てられた既存病院棟のみ解体せず残し、耐震改修して活用する。

そして中間棟に新しく階高を併せた新棟を増築し

新しい土地に増築する建物は重量の重いCTやMRIなどを載せる構造を最初から考慮し、併せて検査部門棟としました。

病院全体計画のアウトラインが決まる中で、病院の機能をどこまで維持しながら工事できるかということが次の大きな課題でした。

許容床面積から、4床室中心で個室率30%以下の病棟の床面積を検討すると、

3病棟編成としか展開できないということが判明しました。

この結果、現在の病院の病床数を確保しながらの増改築は非常に厳しいと判断し、

この法人の中で展開する6病院の病棟の構成を再検討し、1/4の病床を他の系列病院へ移動させることが決まりました。

そこで大きな問題となったのが建て替え手順でした

この建て替え手順は

1.納得しながら進める医院・病院づくり(12)「S病院増改築工事建て替え手順」に

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