利用者に喜ばれる建物づくり 建築について

連載29-3.納得できる設計者の選定とは(1)建物の良否は設計の良否による

医院・病院を新築・増改築・改修しようとしている方に役立つ建物づくりの連載−29

利用者に喜ばれる医院・病院づくり 第1章 納得しながら進める医院・病院づくり

3.納得できる設計者の選定

今回から設計者選定について述べさせて戴きます。

私たち設計者は、選定される立場なのですが、選定する側も自分の利益、強いては組織を守るための知識として、参考にして戴けたらと思います。

(1)建物の良否は設計の良否による

質の高い建築、優れた生活環境を作るために、建築の「設計」が大切である事は、多くの人が認めることでしょう。

では、皆さんはその「設計」というものをどう認識しているでしょうか。

「建築設計」とは、形のないところから形とそれにより生じる空間を創造する(無から有を産み出す)仕事です。

設計者は発注者のパートナーとして、企画の段階から共同する仲間である

と言う認識は必ずしも確立していないのではないかと思います。

生活を支えるヒューマンな空間と形を創造する設計

には、どのくらいの手間がかかるのでしょうか?

また、専門的な力量として何が必要で、

設計者にその作業を保障する費用、すなわち適切な「設計料」については

ほとんど認識されていないのが現状では無いでしょうか。

設計料

については、多くの場合、

「工事費の何%か」

と言う値踏みがされる状況です。

市場の原理による「安くて良い物が得たい」と言うことで設計料を捉えている人もいまだに多く見られます。

設計者の選定方式

発注者が、設計者の選定方式として、

「競争入札方式」即ち設計料の多寡で設計者を選定する方式が、長い間行われてきました。

『競争入札(きょうそうにゅうさつ)とは、

売買・請負契約などにおいて最も有利な条件を示す者と契約を締結するために

複数の契約希望者に内容や入札金額を書いた文書を提出させて、内容や金額から契約者を決める方法。

主として国などの公的機関などが行うことが多い。』(出典:ウィキペディアより)」

すなわちこの競争入札では、どういう風に見積もったかでは無く、たった一枚の札に書かれた数字を見て決める方式です。

そこで行われていたのは、札に書かれた1行の数字が大きいか小さいかの見比べでした。

官庁の設計者選定には、会計法や地方自治法の規定に準拠して、いまだにこの方式が多くとられています。

しかし、そもそも発注者が設計を委託する時点では、建設計画の条件(目的、用途、規模、予算、敷地状況など)を示すだけで、建築物として具体的な内容は見えていません。

物品購入と同様ではないのです。

未だ形になっていないモノに対してお金を払うことになるのですから、慎重にならざるを得ないのは当然です。

それなのに、その結果、どうして数字、金額の多寡、値段で決めるのでしょうか?

私たちは、確かにネットや通信による販売で写真で見える範囲、僅かな説明だけで判断して、

そして最も判断基準の重きを成しているのは値段だという

この販売方法にすっかり慣れてしまい、出来上がったモノと勘違いして、

若しくは素晴らしいものが出来ると思い込んで設計者を決めていないでしょうか?

設計者の選定とは、

この成果を得るために、この仕事を発注者と共に、

技術力、経験と想像力を駆使するパートナー

を選ぶことです。

あらかじめ形や性能が見えて、実物を見て購入できる、例えば車のような物品を購入する場合と違います。

又、建売住宅という実物を見て買う方法も無い訳ではありません。

それは何十棟もの同じような間取りが量産されている大量生産住宅のことです。

確かに、確認申請には1級なり2級の建築士が必要なので関わりますが、

設計者が関わる部分は相当限定的だと言って良いでしょう。

これまで長い間、

「入札による選定方式」の不合理

が論じられ、それに代わる設計者選定にふさわしい方式が求められてきました。

その到達点として、

1.「特命方式」(選定委員会等による推薦)
2.「コンペ方式」
3.「プロポーザル方式」

が望ましいといわれ、

さらに、1999年に、日本建築家協会(JIA)が、新たに第4の方式として、

4.「資質評価方式」(QBS)

を提言しています。

2003年にも日本建築学会が「公共建築の設計者選定方法の改善についての提言」を出していて

その中でも資質評価方式を一つの選択肢として提案しています。

(この4つの方式については別に説明いたします。)

設計者の選定

を皆さんはどう考えているでしょうか。

建物の良否は、設計の良否によります。

したがって、設計者の選定は発注者にとっては極めて重要なことです。

特に、複雑な機能を持つ医療福祉施設の設計は、医療設計の熟達者による十分なコミュニケーションなくしては納得できるものがつくれません。

しかも設計は個人の作業だけではなく設計者集団という組織の仕事であり、建主と設計者の間で繰り返される共同作業です。

発注者は設計者の選定にあたり、何を見極めなければならないのでしょうか。

私どもの事務所として

設計者の選定には、

「事例を見てその作風が気に入り、

面接して人柄を知り、

評判を調べて信用と能力を知り、

そうやって、人と組織に惚れ込んで委託するのではないか」

と思っております。

このように発注者が努力して、設計者を直接見つける選び方を「特命方式」と呼びます。

しかし、数多くある設計事務所の中から特命にするには、情報入手から始まって大変な努力を必要とします。

その設計者を見つける方法は、次〃回に

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