医院・病院を新築・増改築・改修しようとしている方に役立つ建物づくりの連載−22
利用者に喜ばれる医院・病院づくり 第1章 納得しながら進める医院・病院づくり
2.施設づくりの流れと設計者の役割
(10)見積り結果と施工者の決定
提出された見積書について、設計監理者として私は次の項目に沿って検討し、報告書を作りました。
①見積もり内容の精査、「落とし」、「誤り」がないか。
②見積もり数量、単価を比較し、各工事別に特別高いものをチェックする。
③施工者の技術レベルを判断する見積もり内容の分析を行う。
④一括下請け等の飛ばし工事の危険性等の分析を行う。
⑤現場担当技術者の経歴。
⑥施工工程計画の緻密さ。
⑦請負工事に対する熱意等の検討。
ここで明らかになった内容を総合的に判断し、設計監理者として報告します。
この業者選定報告書を、法人の理事会で検討して貰い最終の決定をしました。
この時、工事金額が予定した金額をオーバーしていた場合などは、順位を決めて交渉(ネゴシエーション)を行います。
又、官公庁など公的施設建築工事の場合では不当に安く入札する、いわゆるダンピング行為を防ぐために、
予定価格を大幅に下回った業者を除外する欠格条項を決めています(一般に15ないし20%以上下回った場合)。
しかし、S病院増築工事の場合、逆に予定価格を大幅に下回る見積もりが出てきたことを、どう判断するかが焦点でした。
見積り額で1番の底値を出したM組は、仮設工事費が少なく、これでは工事中の仮使用申請した工事が十分に出来ないのでは無いかという懸念もありました。
決定前に工事部長、営業部長、積算部長を呼んで、事前工事、仮設工事に対して注意喚起をした上で、見積り金額は変わらないことを確認しました。
それらのことをのみ込んだ上で、この工事に掛ける熱意の表れとし、社長を呼んで最終確認しました。
が、後日、難しい工事内容に見合った十分な施工体制が取られなかったことから、
大幅な値引きや安く取った場合のデメリットを痛感させられました。