感染防止に役立つマスクの効果と付け方について
国立病院機構仙台医療センターウィルスセンター長の西村英一氏に聞いた記事から筆者が抜粋編集し掲載します。
新型コロナウィルスの空気電波に対するマスクの防御効果の実験(東京大学医科学研究所)
が、10月21日(公開)に行われ、西村英一氏も協力したそうです。
東京大学医科学研究所による新型コロナウィルスの空気伝播に対するマスクの防御効果
左側のマネキンの口からSARS-CoV-2が噴出されチャンバー内に拡散する。
右側のマネキンには人工呼吸器が繋がれており、吸い込んだウイルス粒子はウイルス回収装置に捕集される。
新型コロナウィルスの飛沫/エアロゾルに対するマスクの防御効果
マスクなしを100%とした場合の生きたウィルス吸い込み量の減少率を図で表します。
1. 吐き出す側にマスクあり ⇄ 吸い込む側にマスクなし
布マスク・・・・・・・・・76%・・・・・・・マスク無し
不織布マスク・・・・・・・・・73%・・・・・・・マスク無し
N95マスク(密着)・・・・・・・・・100%・・・・・・ マスク無し
2. 吐き出す側はマスクなし ⇄ 吸い込む側にマスクあり
マスク無し・・・・・・・・・17%・・・・・・・布マスク
マスク無し・・・・・・・・・47%・・・・・・・不織布マスク
マスク無し・・・・・・・・・79%・・・・・・ N95マスク(密着)
3. 吐き出す側はマスクあり ⇄ 吸い込む側にマスクあり
布マスク・・・・・・・・・68%・・・・・・・布マスク
不織布マスク・・・・・・・・・71%・・・・・・・不織布マスク
N95マスク(密着)・・・・・・・・・100%・・・・・・ N95マスク(密着)
出典:東京大学医科学研究所「新型コロナウイルスの空気伝播に対するマスクの防御効果」より抜粋
両方がマスクをしない場合、
1メートル離れても生きたウィルスを吸い込むことがわかりました。
咳が出た直後は、マスクの内側では
喉や鼻の粘膜からできた小さな水飛沫の粒子は、
乾燥で小さくなることもなく大きいままなので、
素材によらず、それらはマスクによってほぼ止められます。
感染者のマスク着用に、高いウィルス拡散防止の効果があることがわかりました。
マスクの着用の仕方
不織布マスクは素材としての性能は高いのですが、欠点は隙間が多いことです。
鼻や口の周りに隙間ができないように装着しましょう。
顔のサイズに合ったマスクを選び、鼻の位置で追って使いフィットを良くすればメガネも困りません。
マスクから鼻を出していると防御には全く役立ちません。
不織布マスクやN95は静電気によってウィルスを含んだ粒子を内部にとどめているため、
マスクの表面を触ってもウィルスは手につきません。
一方、水で濡らすと性能は落ちます。
マスクを洗濯したり、アルコール消毒したりすることはやめましょう。
フェイスシールドやマウスシールドはマスクの代用にはなりません。マスクをしない場合と同じです。
マスクが必要なのは、新型コロナウィルスが流行している地域で、近くに人がいる密閉した屋内です。
屋外で周りに人がいない時や、患者がいない家の中、1人で車を運転している時などはマスクは必要ありません。
昼食を食べる時などは
短時間マスクを外して食べるくらいなら、感染リスクは低いと思います。
換気をし、大声を出さず、お茶を飲みながら、唾を飲み込みながら食事をするとさらにリスクを減らせます。
会議などで長時間同席する場合は、
広い場所にして距離を取ったり、常時、窓を少し開け、換気をするなどして3密になるのを避けましょう。
うがいも口の中のウィルスを減らすのに役立ちます。
食事や睡眠をしっかりとって、適度な運動をし、抵抗力を落とさないことも感染予防に大切なことです。
室内の湿度は50%以上に上げ、乾燥から喉の粘膜を守りましょう。
マスクの種類
平型マスク:一般的なガーゼマスクといわれるもの。阿倍のマスクとも(とは言われていませんね)
プリーツ型マスク:不織布マスクに多い型
家庭用、医療用で普及している不織布マスクの基本的な構造は、下図のような構造です。
不織布製のマスクは、
外側の表面不織布、内側の額に触れる不織布、中間に挟んだフィルター機能を有する不織布で構成されます。
不織布の網目の大きさで捕集するだけでなく、
中間層のフィルター不織布に捕集機能を発揮する加工(帯電加工)を施すなど、
各素材に最新の技術を採用した不織布で構成しています。
立体型マスク:ウレタン製のマスクに多い形
衛生材料や衛生用品、医療器具などを取り扱う多くの企業は、一般社団法人『日本衛生材料工業連合会(以下、日衛連)』に加盟しています。
そのため加盟企業が生産するマスクには、このように日衛連の指定した『全国マスク工業会・会員マーク』がパッケージに刻印されているのです。
日衛連の指定した『全国マスク工業会・会員マーク』
マスクを買う時はパッケージのこの『マーク』に注目!(偽物も出まわっている)
N95マスクについて
出典:職業感染制御研究会による解説より
N95マスクは息苦しいため、患者さんの使用には適していません。
普通の人が外出時付けるかどうかというと、息苦しさから一般的では無いと思います。
空気感染予防対策を必要とする患者さんがやむを得ず、
病室外に出るときには、N95ではなくサージカルマスクを着用することが望ましいと言うふうに言われています。
私も外科手術後、ICUから一般病室に戻った時(それでも集中看護病室と呼ばれる4床室だった)、
マスクは、病室外に出る時にサージカルマスクを付ける程度だったと記憶しています。(筆者)
サージカルマスクとは
サージカルマスクが必要な場面
- 患者呼吸器分泌物、血液・体液が飛散し、医療従事者の鼻口腔粘膜がこれに曝露するリスクがあるときに着用します。
- 清潔操作を要する処置を行う際に、医療従事者が口や鼻に保菌している感染性病原体に患者が曝露しないために着用します。
- 飛沫予防策を行う患者病室の入室前に着用します。
- 咳・くしゃみ・鼻水のあるときの咳エチケットとして使用します。
市販されているサージカルマスクの例
高性能99%カットフィルターを採用した3層構造でブロック性と液体バリア性に優れています。医療現場でも使用されてます。
外面・内面:軽くて強度があるスパンボンド不織布を使用。
高性能フィルター:咳や飛沫など、ミクロ粒子をブロックする極細繊維(メルトブロー不織布)を使用しています。
■対象:飛沫・風邪・花粉・PM2.5など
■内容量:50枚/1箱
■サイズ:175㎜×95㎜
■素材:ポリプロピレン(本体・フィルター部)、ポリエステル・ポリウレタン(耳ひも)、ポリオレフィン(ノーズフィッター)
詳しくは下のリーフレットをご参考ください。
参考:N95マスクの選び方・使い方