医院・病院を新築・増改築・改修しようとしている方に役立つ建物づくりの連載−31
利用者に喜ばれる医院・病院づくり 第1章 納得しながら進める医院・病院づくり
3.納得できる設計者の選定とは
(3)基本構想の段階から設計者に相談
病院や福祉施設の設計に、私たちが参加する過程として、どんな場合があったのかを述べます。
1.設計監理を「特命方式」で依頼される場合
2.事業の基本構想の段階で相談依頼があり、コンサルタント契約をして計画を進め、計画内容が決まった段階で、あらためて設計契約にうつる場合
この2つがほとんどでした。
相談内容は以下のように多様で、緊急度も違います。
①施設の老朽化調査や耐震診断
②敷地の条件調査
③新しい機能を取り入れるための拡張施設条件調査
④施設の維持管理
⑤リニューアルの方針とそのプログラムの作成
⑥病院施設内の討議用資料と施設計画資料の作成
⑦建て替え、移転、新設の構想を練るための基本資料作成
⑧施設の未来像、コンセプトを描くための助言
⑨病院経営上の瀕死状態からの再建計画における病院建築計画への助言コンサルタント
特に最近では、医療情勢の厳しさを反映して
「生き残りと地域医療を守り抜くための21世紀型医療のあり方」
「医療と福祉の連携で在宅支援を図る方針」などをつくるための助言、
「介護保険制度下の医療福祉のあり方」についての経験事例を求められることが多くなっています。
医療法人の全施設の見直しや、施設の療養型病床群への転換の建築的可能性と問題点についてなどの調査と報告を求められています。
どんな相談の場合も、相談を受けて進める業務内容と範囲を確認して、報酬額を提案して協議し、業務範囲・報酬および期限を定めた上で業務を開始します。
もちろん、最初の打ち合わせや打診・相談は報酬の対象時間に計算することはありません。
業務内容とプログラムを確認してコンサルタント契約をすることが専門家としての作業の保障です。
その際に、いつも問われる2つの質問があります。
①「このコンサルタント契約と次の設計監理契約との関係はどうなるのか?」
②「計画が中断した時に、報酬はどうなるのか?」
当然の質問ですね。
事業主にとって事業の基本構想を描き始めるのは早い方が良く、未だ、法人内部で全体には提起する時期でもなく、
検討チームを編成する前の、専務理事や事務長などが検討する段階の場合もあります。
それだけに、業務内容と範囲を明らかにした上で、その業務報酬を決定することが必要です。
法人側にとっても経費的にも研究・調査費、事務費の段階でしょう。
業務の中断に対しては、それまでの業務を精算して提出し、協議の上で支払いをしていただいています。
それは、設計監理業務の場合も同じです。
設計者の選定は、プロジェクトの成否に大きく関わることです。
事業主として、設計者選定にあたり、指名対象を広げてよりふさわしい設計者を選びたいという思いを持たれるのは当然のことです。
また、法人に関係する多くの方々、特に理事会での合意が大切です。
したがって、コンサルタントから自動的に設計者を決めてしまうことは難しいでしょう。
まだ、設計者選定の時期に至らぬ段階でも、相談相手を決めて、基本構想を練る必要があり、その上で設計者選択の自由が欲しいものでしょう。
患者さんが命に関わる手術をするのに、手近に通う病院で大丈夫かという懸念を抱くことがあると言われるように。
さりとて、建物が立派で高度な医療機器がある、大きい病院であれば安心ということにはなりません。
やはり、医師をはじめとする医療関係者の姿勢や技量に期待します。
患者さんが病院を選ぶ時、どうしているでしょうか。
信頼している「かかりつけ医」の存在で安心感と悔やまない納得できる受診と治療が得られているのと似たところがあると言えるのではないでしょうか。
これまでは、コンサルタント段階での設計者の対応、熱意、姿勢や力量に信頼を得て、設計業務に進むということが、私の会社ではほとんどでした。