医院・病院を新築・増改築・改修しようとしている方に役立つ建物づくりの連載−18
利用者に喜ばれる医院・病院づくり 第1章 納得しながら進める医院・病院づくり
2.施設づくりの流れと設計者の役割
(6) 基本設計では総意の結集を
基本設計の段階では、基本計画までの間に確認されたことを前提に、建物の設計に入っていきました。
基本設計の実際の作業として、基本計画で作成されたおおまかなプランに基づいて、
各階の間取りを示す基本設計図案として第1次案を提出し、
これをたたき台として全体でも、各部門でも、討議を進め、節目ごとに何次案までも提出し直しました。
その中では、予算や法規上の制約、医師の配置上の問題などで計画の手直しを迫られたこともあります。
絶えず変化する医療機器(特に大物のMRIやCT、超音波、エコー等々)、OA機器等の選定との関係でも、
構造的、設備的に計画案に影響する場合があり、短期間に意見を集中して決断することもありました。
特に、カルテ問題を解決するために(この建設はかなり前なので電子カルテ導入以前のこと)、
シングルピッカーと言う自動カルテ検索機と
自走式搬送機(小型の搬送機がベルトコンベヤーのようにレールの上を走って行き、検査物、カルテ他書類等を目的地に運ぶシステム。子供にとっては床から天井などを動く物として見て楽しんでいました)を
導入するかどうかは、建築上大きな影響があるために、早期の決断が必要でした。
(これも懐かしい話ですね。今は、このような自走台車は見られませんが)
各部門が納得し、全体としても構想に見合ったものにしていくには、期間として1年間が必要だった基本設計でした。
なお、気送管システム(エアーシューターとかの呼称あり)は2020年現在でも、
病院等で日本のみならず欧米でも今でも現役だそうです。
それは、薬剤や検体を高速に安全に院内を搬送できるようになっているからだそうです。
カルテについては2001年厚労省が策定した「保健医療分野の情報化に向けてのグランドデザイン」と補助金制度が後押しして、電子カルテの導入が進み
ここに来て2015年以降、急速に医院等の小規模外来施設でも電子カルテの導入が進んでいます。
しかし、「2006年度までに全国の400床以上の病院及び全診療所の6割以上に電子カルテシステムの普及を図る事」
の目標は達成されていないそうです。