利用者に喜ばれる建物づくり 建築について

連載12-1(12)S病院増改築工事の建て替え手順

医院・病院を新築・増改築・改修しようとしている方に役立つ建物づくりの連載−12

利用者に喜ばれる医院・病院づくり 第1章 納得しながら進める医院・病院づくり

1.参加型の共同設計で進める設計手法-12 

S病院増改築工事の建て替え手順(病院リニューアル成功例)

ここで具体的なS病院増築工事の建て替え手順の概略を説明します。

手順
1番目は、購入した土地に新たな建物(新棟)を建築すること。
2番目は、中間にある既存建物をぶち抜いて渡り廊下を建築し、既存の病院棟と新棟をつなげること。

渡り廊下といっても空中歩廊のようなモノです。

3番目に、渡り廊下を活かしたまま中間にある既存建物を解体すること。

既存病院と新棟が渡り廊下で繋がれた状態を維持しながら、その周りを囲んでいる既存建物を解体し、

工事の間も長さ15メートルの渡り廊下は活かし、患者さんは既存棟から新棟にある検査部門へ移動出来るようにすると言うモノです。

工事している真っ最中の現場の中を、囲われているとは言え、2階に浮いている空中歩廊状態の渡り廊下を患者さんが移動すると言う、

かなりアクロバチックとも言える工事を行ったのは後にも先にもこの工事だけでした。

4番目に解体した中間棟の跡に吹き抜け構造を持ち、後に待合となる部分を建築すること。

この工事時期が安全面で一番厳しかったと思います。

建築指導課も仮使用建物の安全原則に則って工事現場が火災等の心配がないかを確かめに来ました。

私たちもそのような工事をやったことがないので、慎重でした。

最後
5番目に既存病院棟をコンクリート躯体だけの裸にし、耐震補強をしながら内装を1階から3階まで全てやり替える工事です。
改修しては移動し、移動で空いたところを改修しては、又そこに移動させて新たな改修をする、まるでパズルでした

上から下まで改修と移動を繰り返し、玉突き工事の連続でした。

1階は階高が低くても良い受付や入院・外来事務そして医療事務などの管理部門機能を集約して、

新棟と既存棟に挟まれた中間棟は総合外来待合として吹き抜けとしました。

さらに待合と空間的につながっている2階ラウンジ部分はトップライトがあり、ラウンジと併せて豊かな明るい空間が出来たのです。

そして1階と2階に分かれていた外来診療部門全てを2階にまとめ、1階からはエスカレーターを導入しました。

患者さんのいる病棟は一番最初の増築工事で完成した新棟へ移動させ、空いた既存棟の病室も最後には改修して病棟に戻しました。

既存棟と新棟の間に、中間棟を増築し、三棟を接続した上で、最後に既存棟を耐震改修し、工事は完成したのでした。

工事期間は3年を超えましたが、大きなトラブルもなく無事に完成をしたときには設計・施工関係者は大いに安堵したものでした。

さて、途中の山場は幾つもありましたが、ここでは1つだけ、お話しします。

途中で、問題になった吹抜けとラウンジとトップライト

それは、中間棟の待合が吹抜けになっていること。

そしてその待合と空間的につながっている2階ラウンジ。

その天井に8m幅×15m長さの大きなトップライトでした。

「厳しい建設予算に対して、無駄ではないのか」という否定的なモノと

「今までは天井が低かったので、ここに来るとほっとする」「あってよかった」と言う肯定的なモノです。

既存の病院建物の躯体はそのまま残して、横に二度に分けて増築する方法を選択し、

その低さと狭さと暗さを解決し、魅力的で快適な空間にする提案が、

既存棟と新棟を接続する中間棟部分に、大きな三角形のトップライトのある多目的ラウンジを設けたことでした。

職員約200名と友の会会員が一堂に集まった基本計画の説明会で、

CGでこの空間とトップライトを説明したときには大きな共感と合意が得られていました。

しかし、その後

設計から工事の過程でも、常に厳しい建設予算と計画案の整合性が検討されたのでした。

各部門ごとの所属職員の検討会では所要室の割り振りのせめぎ合い(早い話が縄張り争い)の中で、

この待合室とトップライトのあるラウンジの存在は予算的にも面積的にも何度も再検討の俎上に上り、取りやめの寸前までいきました。

増改築後の新病院への大きな要望

患者さんや友の会会員さんたちへの改築に対するアンケートでは「明るく」「ほっとする」「癒しの場」の要望が強くなっていました。

しかし「トップライトが無駄」の声が職員の中から大きくなったこともありました。

法人理事会の決断は、最終的に患者さん友の会員の要望を受け、建築チームの提案通りに進めるというモノでした。

完成後、待合、吹抜と続くラウンジ空間は、予約待ちの患者さんだけでなく、受診後の患者さんや入院患者さんとその家族・見舞い者なども含めて、

明るくい開放的で、ほっとできる場になっている

といわれ、ホットしたのも事実でした。

次は

第1章 納得しながら進める医院・病院づくりの 2.施設づくりの流れと設計者の役割

です。

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