医院・病院を新築・増改築・改修しようとしている方に役立つ建物づくりの連載−33
利用者に喜ばれる医院・病院づくり 第1章 納得しながら進める医院・病院づくり
3.納得できる設計者の選定とはー(5)
設計者選定は価格競争になじまない
設計者選定の具体的な例から
事業内容や条件が明確に限定されていない段階で、
「イメージ図」を、しかも、基本計画図までをも求めるような場合もあります。
しかし、数社から提出された案の評価基準はどうなっているのでしょうか?
設計案をどのように評価されるのか
選定する側は、その疑問には中々答えてくれるところはありませんでした。
設計者のプロジェクトの理解力、
その課題にどう迫っていくのか、
何を検討すべき要素としてアプローチするのか
などの意見を求める事は、設計者の視点、力量や姿勢を見極めるのに有効と考えますが、
設計デザイン(平面図、立面図・・・等々)や投資額は設計者の思い込みやこだわり等の予断となり
また、その表現の出来具合で幻惑されるようなものでもあります。
また、質問が何を見極めようとしているのか、評価しようとしているのか測りかねる項目もあります。
設計料の提示を求められることもあります。
この段階では、業務内容と範囲、すなわち業務量が明らかになりません。
仮に設計者が工事費予算から算定しても、計画の条件によっても異なりますし、
依頼者が期待する業務内容が全く不明で、その設計料の算出は全く不安定なものです。
もし、選定の評価項目にそうした曖昧な報酬額が入るとしたら、
その選定自体が極めて不安定なものと言わざるをえません。
設計料は、業務内容と業務範囲を確定し、それに関わるスタッフの人件費が基礎です。
それに事務所の経費と特別経費(旅費や宿泊費他)及び技術料が加わります。
建設省(現国土交通省)の告示98号で、設計監理料の算出基準があります。
[設計事務所の開設者がその業務に関して請求することの出来る報酬の基準]
「実費報酬加算方式」及び「略算方法」が最も適しているとして算出の方式が決まっています。
しかし、実際に成約するのは、その基準額の半分以下と言うのが現状です
設計事務所の経営はなかなか厳しいものがあります。
どのクライアント・依頼者・建主も大切です
いずれの建物に対しても、完成後も継続した責任を負う設計事務所としては、
ある依頼者に対して設計料を極端に下げたり上げたりすることができません。
設計の業務報酬は、完成品に対する対価ではなく、共同作業でプロジェクトを成功させる事への対価なのです。
すなわち、
設計とは、真のニーズを明らかにして、それを形にすることです。
設計の業務報酬とは、その求められる職能と専門的な作業に対する対価です。
もし、その仕事を得るためにダンピングすることがあれば、
必ず何かで補わなければならなくなる筈です。
社員スタッフや協力事務所(構造・電気設備・機械設備設計事務所)への無理強い、
または、仕事の密度を下げる(あり得ないことですが)、
また、決してやってはならない、ゼネコンやメーカーなどへ
設計図面書きの協力をして貰うようなことになりかねません。
よく聞く話です。
元請けの優位性を活かした設計事務所が、下請けにと称して
設備設計図もサブゼネコン(設備施工会社などのこと)に、書いて貰うこと。
もし、ゼネコンやサブゼネコンなどの施工者へ図面を書くことを依頼してしまえば、
その施工者が施工業者選定の「工事入札」の際、他の競争者に対して、
談合を仕切るチャンピオンとなり、 厳正な施工者選定にはなりません。
工事費は当然競争原理が働かず、その分、いやそれ以上に高くなります。
それを行った設計者は、
建築主に対して重大な配信行為をしたことになります。
建主を裏切るようなことを一切しない設計者というのが、私たちの会社「中央設計」なのです。
そして、それを社の「目的・理念」に謳ったのです。
それは、創立10年目の1982年の社員総会のことでした。
「中央設計の目的・理念」は次回に