新型コロナウィルスを制圧する
ウィルス学教授が説く、その「正体」
話し手:河岡義裕、聞き手:河合香織共著、2020年7月文藝春秋社刊
これは、もの凄く科学的で冷静に正しいウィルスへの取り組み方および知識を書いている本である。
私はKindle版で読んだが、昨年7月末に出ているが、政府の誰かはこれを読んでいるんだろうか?
あのオミなんとか言う人達も含めて、この本を読めばどういう姿勢でこの新型コロナに取り組めば良いのかが分かると断言できる。
読んでいないから、この有様なのだろうな〜
2020年1月16日このウィルスによる感染が国内で初めて確認された。今日は正しくその一年後である。
2020年4月7日に緊急事態宣言が出されて、それが5月下旬全国で解除されてから、感染横ばいが続いた。
この本が出版されたのそんな時である。
気の緩みを、そして冬の感染爆発を警鐘乱打していた。
8月上旬に波を迎えるが、政府は微動だにしなかった。
それからは、全国で500人以上の感染が続いた。
11月に入るとはっきりと上昇カーブを描くようになった。
それなのに、政府は「Go To〜」をやってしまった。
多くのメディア、マスコミ、そして国民も心配する中で、踏み込んだ。
全国にウィルスをまき散らかすようなものだと謂われながら。
結果が、こうだ。累計感染者は30万人を超え、一日の新規感染者数も8,000人に迫っている。
交通事故による死者数は2,839人(2020年)である。
そして、昨年1月16日以降、1年間の新型コロナウィルスによる死者数は4,489人(2021/01/16現在)である。
では、『ウィルス学の世界的権威 河岡義裕氏』の本のさわりを紹介する。
前書きより
著者の河岡義裕氏は東大医科学研究所ウィルス感染分野教授、同感染症国際研究センター長、ウィスコンシン大学獣医学部教授を兼任。国際ウイルス学会会長を務めた。
ロベルト・コッホ賞、野口英世記念医学賞、紫綬褒章、日本学士院賞。米国科学アカデミー外国人会員。
世界で初めて新型インフルエンザの人工合成に成功し、エボラウィルスのワクチンも開発中の、ウィルス学の世界的権威である。
その河岡教授が、新型コロナウィルスの最新情報、有効な対策と無意味な対策、収束までの見通し、ウィルスの正体について、わかりやすく解説する。
人類にとって、戦後最大の脅威となっている新型コロナウィルス。
私たちはいかに、未知の感染症と向き合えばいいのか?
感染症の医師は人がどのように病気になるかに詳しいし、疫学の専門家は防疫についての戦略に長けている。
一方、河岡教授はウィルス学の専門家であり、ウィルスのそのものの性質に深い知見がある。
新型コロナウィルスの特性を最も知る1人であろう。
目に見えないものは恐ろしい。
それは人間の本能である。
けれども、相手の状態を正確に知ることこそが、最も言われの不安を脱ぐのに最も効果的なのだろう。
現時点で、何が分かっていて、何が分かっていないのか。正確な知識こそが最も大きな武器になるのだと痛感した。
第1章 「新型コロナウィルス研究最前線ーこれからも流行を繰り返すのか」より
この流行は始まったばっかり
そのようなときのために、私たちは自分たちでウィルスの流行に対応できるようにする必要があります。
ワクチンも国防の1つです。
そしてマスクや消毒薬、医療機器、そして食料も国防です。
最低限、国民の命を守る基本的な事は地獄でできるようにしなくてはいけないでしょう。
多くのことを海外に依存する怖さを今回のことで実感したと思います。
そして、ウィルスや公衆衛生、感染症などを研究する人材をもっと育てていかなければいけないと思っています。
このウィルスの流行は始まったばっかりです。
最悪の事態になることも考えられます。
「ああいう幸せな時があった」と後で思い返すような事態を私は心から恐れています。
気づいたときには手に生えないようになっている可能性も否定できません。
そのために、研究者も市民もできる事はまだまだあると思っています。
あなたにとって新型コロナウィルスは何かと聞かれますが、
今の私にとっては、制圧に向けていろいろなことをやらなければいけない対象です。
自分の専門性をもとに、目の前に現れた課題に向き合っています。
そこで懸念されるのは、世の中が急速に緩んでしまうことです。
欧米に比べて感染者数が少なく、死亡率も低いことを根拠に、
日本は特別だと思う風潮が今見受けられます。
日本人は衛生意識が高いし、医療体制も充実している、幼少期のBCG接種も効果があるようだ、と日本を特別視している人が少なくないことが、私には危険に思えるのです。
私が思うのは、戦争のことです。
大日世界大戦の初期、日本人は、日本は勝てると信じていました。
しかしそこには冷静な状況分析はなく、自分たちは価値と漠然と思い込んでいたと思います。
今回の新型コロナウィルスでも、それと似た空気があったような気がします。
日本の医療技術の高さが死亡者数の少なさに大きく寄与している事は確かです。
しかし、我が国における感染の拡大が比較的緩やかであるのは、日本が特別だからではなく、
適切な流行対策が取られ、多くの国民が一生懸命、行動を自粛してきたからです。
にもかかわらず、一気に自粛ムードが緩んでしまえば、再び感染拡大を招きかねません。
以下、略
あとがきより
2019年暮れに現れた新型コロナウィルスは、瞬く間に世界中に広がり、震源地の中国のみならず、世界各国で多くの人が死に、車の数は今も毎日増えている。
後に明らかになるのだが、2019年暮れには、このウィルスが人から人に伝搬し、武漢では大流行を起こしていた。
にもかかわらず、ヒトーヒト感染が起きていると公式に発表されたのはかなり時間が経ってからである。
そのために、対応が遅れたのは否めない。
ただ、それだけではない。ヒトーヒト感染が起きて、ウィルスが世界各地に伝播していることが分かった後でも、流行初期における世界の対策が十分だったとは言えない。
また、ほとんどの人が、呼吸器疾患の重症患者をサポートするための医療体制のキャパシティーがこれほど限られていると理解しておらず、
一旦そのキャパシティーを超えてしまうと、後はコップから溢れる水のように、普段なら助かる人が死んでいってしまったのだ。
世間では、ウィズ・コロナ、早くの果てにはポスト・コロナと言う言葉も目にするが、流行はまだ始まったばっかりで、
この冬の大きな波に飲み込まれてしまうかもしれず、ウィズ・コロナで済むのかさえわからない。
私たち人類はこのウィルスについて知らないことばっかりなのだ。
もちろん、わかってきたこともある。
本書は、これまでにわかってきたこと、わかっていないことを多くの人に伝えることを目的として企画された。
ここで、「正しい知識を身に付けて、恐れることなくウィズ・コロナを実践してほしい」と、本当は言いたいところだが、
これから起こることが予測できないので、「恐れることなく」とは言えない。
とは言え、本書でも述べたが、感染症は病原体にさらされなければ感染を避けることができる。
そのためにはどうすればいいかをそれぞれがよく考えて、
有効なワクチンや抗ウィルス薬ができて、本当の意味でのウィズ・コロナ、ポスト・コロナの時を迎えるまで、
この大変な流行をみんなで乗り切りたい。
是非、国民の皆さんにも読んで貰いたいが、一番先に読んで貰いたいのは菅首相他政府・官僚にである。
国民の命を救うために、真実のコロナ研究に裏打ちされた対策を取って欲しい。
是非、この本「新型コロナウィルスを制圧する」河岡義裕・河合香織共著文藝春秋社刊をお読み下さい。